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鼠径ヘルニアの手術費用はいくら?保険適用と高額療養費制度を解説

鼠径ヘルニアの手術を勧められたとき、病気そのものの心配と同じくらい気になるのが「結局いくらかかるのか」です。手術と聞くと数十万円の出費を想像して身構える方が多いのですが、鼠径ヘルニアの手術は保険診療です。制度を正しく使えば、自己負担は想像よりずっと小さく収まります。

この記事では、術式別の費用の目安、高額療養費制度の使い方、民間医療保険の給付金まで、お金の面の疑問をまとめて整理します。

鼠径ヘルニア手術の自己負担額を見積もる

目次

大前提。鼠径ヘルニアの手術は健康保険が使える

鼠径ヘルニアの手術は美容医療のような自由診療ではなく、全国どこで受けても診療報酬という共通の価格表に基づく保険診療です。「あのクリニックは高そう」という心配は、手術費そのものについては当てはまりません。医療機関ごとに差が出るのは、入院の有無と日数、術前検査の内容、個室代などの部分です。

自己負担の割合は、現役世代で3割、70歳以上は所得に応じて1割から3割です。以下、この記事では3割負担を基準に目安を示します。

術式別。手術費用の目安

健康保険証があれば全国共通の保険診療で手術を受けられる

鼠径部切開法(前方アプローチ)の場合

足の付け根を切開してメッシュを当てる方法です。3割負担での手術料の目安はおおむね5万円前後で、これに初診料、超音波などの検査費、麻酔や薬剤の費用が加わります。日帰りで受けた場合の総額は、おおむね6万円から9万円程度が目安です。

腹腔鏡下手術の場合

お腹に小さな穴を開けて内側からメッシュを当てる方法です。手術料は切開法より高く設定されており、3割負担での目安はおおむね8万円前後。日帰りまたは1泊での総額は、おおむね10万円から15万円程度が目安になります。

入院した場合に加わる費用

総合病院で2日から5日程度入院すると、入院基本料が日数分加わるほか、希望すれば個室代(差額ベッド代)がかかります。個室代は保険適用外で、高額療養費制度の対象にもなりません。食事代も1食ごとの自己負担があります。日帰り手術の費用面での利点は、この入院関連費が丸ごと不要になることです。

高額療養費制度。月の自己負担には上限がある

民間医療保険の手術給付金は日帰り手術でも対象になることが多い

医療費の自己負担が1か月(暦月)で一定額を超えると、超えた分が払い戻されるのが高額療養費制度です。上限額は年齢と所得で決まります。70歳未満の場合の目安は次のとおりです。

所得区分(年収の目安) 1か月の自己負担上限の計算式 上限のおおよその額
約370万円まで 57,600円(定額) 57,600円
約370万〜770万円 80,100円+(医療費−267,000円)×1% 8万円台
約770万〜1,160万円 167,400円+(医療費−558,000円)×1% 16万円台

たとえば年収500万円の方が腹腔鏡下手術を受けて窓口負担が12万円だった場合、上限は8万円台になるため、差額の数万円が払い戻されます。年収370万円以下の方なら上限は57,600円なので、腹腔鏡でも切開法でも、実質負担はこの金額で頭打ちです。

限度額適用認定証を先に取っておくと立て替えが不要

払い戻しは申請から数か月後になるため、一時的な立て替えが発生します。これを避けるには、手術前に加入先の健康保険(協会けんぽ、健保組合、国民健康保険など)で限度額適用認定証を取得しておきます。窓口に提示すれば、支払いが最初から上限額までになります。マイナ保険証を使う場合は、事前手続きなしで同じ扱いを受けられる医療機関が増えています。

同じ月に収めると負担が軽くなることがある

高額療養費は暦月単位で計算されます。術前検査と手術が月をまたぐと、それぞれの月で別々に計算され、上限に届かないことがあります。日程に融通が利くなら、検査から手術までを同じ月に収められないか、医療機関に相談する価値があります。

民間の医療保険。手術給付金が出ることが多い

生命保険や医療保険に加入している方は、鼠径ヘルニアの手術が手術給付金の対象になっていることが少なくありません。外来手術(日帰り手術)を対象に含む契約であれば、入院がなくても給付金を受け取れます。手術名は「ヘルニア手術」「腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術」などで請求します。

給付金額によっては、自己負担額を上回ることもあります。手術が決まったら、加入している保険会社に「鼠径ヘルニアの手術で給付対象になるか」「日帰りでも対象か」を確認し、診断書の要否も含めて早めに準備しておくとスムーズです。

費用を理由に手術を先延ばしにすると、かえって高くつく

費用が気になって受診を先送りする方がいますが、これは経済面でも逆効果になり得ます。ヘルニアが大きく育つと手術の難度が上がり、入院手術しか選べなくなることがあります。さらに嵌頓を起こして緊急手術になれば、腸切除や長期入院が加わり、費用も体の負担も計画手術とは桁違いです。嵌頓のリスクは放置するとどうなるかで詳しく解説しています。

制度を使えば、計画的な手術の実質負担は多くの方で数万円台に収まります。この金額で嵌頓のリスクと日々の不快感を取り除けると考えると、早めの治療は費用対効果の高い選択です。

費用の内訳を分解する

「手術費用」とひとくくりに言われる金額は、実際には次の要素の合計です。見積もりを聞くときはこの分解で確認すると、医療機関ごとの比較がしやすくなります。

  • 初診料・再診料。数百円から数千円
  • 術前検査費。血液検査、心電図、超音波などで数千円から1万円台
  • 手術料。術式ごとに全国共通の点数で決まる中心部分
  • 麻酔・薬剤費。麻酔の種類で変わる
  • 入院した場合の入院基本料と食事代、希望した場合の個室代

このうち保険と高額療養費制度の対象になるのは医療費部分で、個室代(差額ベッド代)と食事代は対象外です。日帰り手術は入院関連の項目が丸ごとなくなるぶん、総額の見通しが立てやすいのが特徴です。

会社員・自営業者が知っておきたい周辺のお金

会社員の場合

日帰り手術と数日の休みで復帰できるため、多くの方は有給休暇の範囲で収まり、傷病手当金の出番はありません。診断書が必要な職場なら、文書料が数千円かかることは見込んでおいてください。職場への説明は「日帰り手術を受け、1〜2週間は重量物制限」で足ります。

自営業・フリーランスの場合

収入減の補償がないぶん、休業期間の短さがそのまま損失の少なさになります。デスクワーク中心なら数日、体を使う仕事でも2週間程度の制限で戻れる日帰り手術は、入院手術に比べて機会損失の面でも合理的です。国民健康保険でも高額療養費制度は同じように使えます。

医療費控除も忘れずに

手術費用は医療費控除の対象です。同一生計の家族の医療費と合算でき、通院の交通費も含められます。年間10万円を超えた分が所得控除になるため、手術を受けた年は領収書をまとめて確定申告で取り戻してください。

見積もりはこう聞く

診察で手術が決まったら、会計前に次の3点を確認するのがお勧めです。

  • 術式と麻酔を含めた、当日の窓口支払いの概算
  • 術前検査と再診を含めた総額の目安
  • 限度額適用認定証を使う場合の手続きのタイミング

保険診療なので金額に医療機関の言い値はなく、誠実なところなら概算はすぐ答えてくれます。答えが曖昧な場合は、それ自体が医療機関選びの判断材料になります。名古屋での医療機関の選び方は日帰り手術の記事を参考にしてください。

よくある質問

結局、総額でいくら用意しておけばよいですか

3割負担・日帰りの場合、切開法で6万円から9万円程度、腹腔鏡で10万円から15万円程度が目安です。高額療養費制度の上限に該当すれば、実質負担はさらに下がります。正確な金額は術式と検査内容で変わるため、受診時に見積もりを確認してください。

健康保険証だけ持っていけばよいですか

初診は保険証(またはマイナ保険証)とお薬手帳があれば十分です。手術が決まったら、限度額適用認定証の取得と、民間保険の給付金請求の準備を並行して進めると無駄がありません。

両側を同時に手術すると費用は2倍になりますか

単純な2倍にはなりません。腹腔鏡下手術では同じ創から両側を治療できるため、片側ずつ2回受けるより総負担が抑えられるのが一般的です。両側の可能性がある方は、診察時に費用も含めて相談してください。

医療費控除は使えますか

使えます。手術費用は生計を同一にする家族分と合算でき、年間の医療費が10万円(所得によってはそれ未満)を超えた分が所得控除の対象です。通院の交通費も対象に含められるため、領収書と記録を残しておいてください。

生活保護や自立支援制度の場合はどうなりますか

生活保護受給中の方は医療扶助の対象となり、自己負担なく手術を受けられるのが原則です。福祉事務所の担当者と医療機関に事前に相談してください。

高額療養費の申請を忘れていました。さかのぼれますか

診療月の翌月初日から2年以内であればさかのぼって申請できます。領収書を確認し、加入している健康保険の窓口に問い合わせてください。

付き添いの家族の費用はかかりますか

日帰り手術では送迎をお願いする程度なので、家族の交通費以外に特別な費用はかかりません。入院手術の場合の面会交通費や、個室代は制度の対象外である点だけ注意してください。

まとめ

鼠径ヘルニアの手術は保険診療で、3割負担の目安は日帰りの切開法で6万円から9万円、腹腔鏡で10万円から15万円程度。高額療養費制度を使えば月の負担には上限があり、限度額適用認定証を先に取れば立て替えも不要です。民間保険の手術給付金で負担がさらに軽くなる方も多くいます。

お金の準備は、制度を知っているかどうかで数万円変わります。費用を理由に放置して嵌頓の緊急手術になるのが、最も高くつく結末です。まずは受診して、自分のケースの見積もりを確認することから始めてください。

この記事の監修者

明石 久美子医師(外科専門医/消化器外科専門医)

岐阜大学出身。これまで大垣市民病院、名古屋掖済会病院、名古屋大学などで消化器外科診療に従事し、現在は鼠径ヘルニアを専門に診療。これまでに約500件の鼠径ヘルニア手術に携わる。

保有資格:医学博士、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、消化器がん外科治療認定医、日本ヘルニア学会鼠径部ヘルニア修得医、がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会 修了、麻酔科標榜医

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