足の付け根のふくらみに気づいて、鼠径ヘルニアかもしれないと思ったとき、最初につまずくのが「これは何科に行けばいいのか」という疑問です。お腹の病気のようでもあり、場所が場所だけに泌尿器科のようにも思える。結局どこに行けばいいのか分からず、受診そのものを先延ばしにしてしまう方が少なくありません。
結論から言うと、鼠径ヘルニアの受診先は外科、または消化器外科です。この記事では、なぜ外科なのか、泌尿器科や内科ではだめなのか、そして同じ外科の中でもどう選べばよいのかを整理します。
鼠径ヘルニアは外科・消化器外科の病気
鼠径ヘルニアは、足の付け根にある筋膜のすき間から、腸や脂肪組織が皮下組織へ押し出され、皮膚の表面にふくらみとして触れるようになる状態です。飛び出してくるのは主に腸ですから、診断も治療も消化器を扱う外科の領域になります。国内で年間十数万件規模の手術が行われている、外科では日常的な病気です。
根本的な治療は手術しかありません。薬や運動では治らず、自然に閉じることもないため、最終的に手術を担当できる科で診てもらうのが最短の道筋になります。それが外科・消化器外科です。
病院の看板ではどう探すか
医療機関によって標榜の仕方はさまざまで、外科、消化器外科、一般外科、胃腸外科などの名前が使われています。どれも鼠径ヘルニアの相談先として問題ありません。最近は「ヘルニア外来」「鼠径ヘルニア日帰り手術」を掲げる専門外来も増えており、名古屋市内でも複数の医療機関が対応しています。看板に迷ったら、その医療機関のホームページで鼠径ヘルニアの手術実績が書かれているかを見るのが確実です。
泌尿器科・内科・皮膚科ではどうなるか
場所が足の付け根だけに、他の科を思い浮かべる方も多いはずです。それぞれの科に行った場合に何が起きるかを整理しておきます。
泌尿器科
鼠径部やその周辺のふくらみは、陰嚢水腫や精索静脈瘤といった泌尿器科の病気でも起こります。男性でふくらみが陰嚢まで及んでいる場合など、区別がつきにくいケースでは泌尿器科を受診する方もいます。診察の結果、鼠径ヘルニアと分かれば外科へ紹介される流れになるため、遠回りにはなりますが行き止まりにはなりません。ただし最初から手術まで見据えるなら、外科のほうが一度で済みます。
内科・かかりつけ医
ふだん通っているかかりつけ医に相談するのも一つの入り口です。視診と触診である程度の見当はつくため、疑いがあれば外科へ紹介状を書いてもらえます。持病があって手術のリスク評価が必要な方は、むしろかかりつけ医を経由したほうが情報の引き継ぎが円滑です。ただ診断しづらい鼠径ヘルニアもありますし、手術適応も専門科にしか分からない部分もあるため、一旦経過観察となっても気になる場合は専門科を受診されることをお勧めします。
皮膚科・整形外科
皮膚の下のしこりに見えることから皮膚科を、足の付け根の違和感から股関節の病気を疑って整形外科を受診する方もいます。どちらも鼠径ヘルニアの治療は行わないため、外科への紹介となります。脂肪腫やリンパ節の腫れ、股関節疾患との見分けは触っただけでは難しく、超音波検査で確定させるのが基本です。自分の症状が鼠径ヘルニアらしいかどうかは、鼠径ヘルニアの症状セルフチェックで先に確認しておくと受診先を決めやすくなります。
子どもと女性の場合
子どもの鼠径ヘルニアは大人と成り立ちが異なり、生まれつきの袋状の通り道が閉じずに残ることで起こります。受診先は小児外科です。小児外科のない地域では、小児の手術に対応している外科か小児科でまず相談してください。
女性の鼠径ヘルニアは男性より頻度が低い(手術症例の10~15%程度)ものの、確実に起こります。女性に多い大腿ヘルニアは嵌頓しやすいことが知られており、ふくらみに気づいたら早めの受診が勧められます。受診先は男性と同じ外科・消化器外科で、婦人科ではありません。
こんな症状ならすぐ受診を
ふくらみが硬くなって押しても戻らない、強い痛みや吐き気を伴う。この場合は嵌頓といって、飛び出した腸が締め付けられて血流が途絶えかけている可能性があります。放置すると腸が壊死し、緊急手術が必要になります。何科かを考えている場合ではなく、夜間や休日であれば救急外来へ、日中であればすぐに近くの外科を受診してください。嵌頓がどういう状態かは放置するとどうなるか、嵌頓のリスクで詳しく解説しています。
同じ外科でも、どこを選ぶかで治療は変わる
受診先が外科と決まっても、どの医療機関の外科に行くかで、その後の治療の進み方は変わります。見ておきたいのは次の3点です。
手術まで同じ場所で完結するか
診断だけ行って手術は他院へ紹介、という医療機関も多くあります。働きながら治したい方にとっては、診断から手術、術後の診察までが一つの医療機関で完結するほうが、通院の負担も日程の調整も軽くなります。
日帰り手術に対応しているか
いまは麻酔と回復管理の進歩により、鼠径ヘルニアの手術は入院せずに当日帰宅できる日帰り手術が広まっています。仕事や家庭の都合で連日の入院が難しい方には現実的な選択肢です。総合病院の入院手術との違いは名古屋で鼠径ヘルニアの日帰り手術を受けるにはで整理しています。
複数の術式から選べるか
手術には足の付け根を切開する方法と、腹腔鏡やロボットでお腹の内側から治す方法があり、どちらが適するかはヘルニアの状態や持病、麻酔の希望で変わります。片方しか扱わない医療機関では、その術式に合わせる形で方針が決まりがちです。両方に対応している医療機関で提案を受けると、自分に合った選択がしやすくなります。
受診したらどう進むか
初診では、いつからふくらみがあるか、どんなときに出るかの問診と、立った状態・寝た状態での視診と触診が行われます。確定診断には超音波検査を用いるのが一般的で、必要に応じてCTが追加されます。検査に痛みはなく、初診は30分から1時間程度で終わることがほとんどです。
診断がつけば、手術の時期と術式を相談して日程を決めます。費用は保険診療で、高額療養費制度の対象にもなります。金額の目安は手術費用と高額療養費制度を参考にしてください。
受診時に伝えるべきこと。準備チェックリスト
受診先が決まったら、診察で次の情報を伝えられるように準備しておくと、診断がスムーズに進みます。
- いつからふくらみや違和感があるか
- どんなときに出て、どうすると引っ込むか
- ふくらみが出ているときの写真(診察時に引っ込んでいても伝えられる)
- 痛みの有無と、あるならどんな痛みか
- 服用中の薬。特に血液をさらさらにする薬はお薬手帳で正確に
- 過去の手術歴。とくに下腹部の手術は術式選択に関わる
診察は視診・触診と超音波検査が中心で、30分から1.5時間程度で終わります。その場で手術になることはないので、「まず話を聞くだけ」のつもりで来て構いません。
名古屋で外科を探す実践的な方法
受診先が外科と分かっても、検索すると候補が多すぎて選べない、というのが次のつまずきです。名古屋で探すときの現実的な絞り込み方を挙げます。
「鼠径ヘルニア 日帰り 名古屋」で検索する
単に「外科 名古屋」ではなく病名で検索すると、鼠径ヘルニアの診療に力を入れている医療機関が上位に出てきます。ホームページに手術件数や術式の説明が具体的に書かれているかは、力の入れ具合を測る分かりやすい指標です。
ヘルニア専門外来の有無を見る
総合病院の中には、外科の中に「ヘルニア外来」を設けているところがあります。専門外来があれば、診断から術式選択までの経験値が期待できます。クリニックの場合は、執刀医の経歴に外科専門医・消化器外科専門医の資格があるか、鼠径ヘルニアの手術実績が書かれているかを確認してください。
通いやすさで最終判断する
手術は当日で終わりではなく、術後の再診と、何かあったときの駆け込み先もその医療機関です。名古屋駅・栄・金山など、自宅か職場から無理なく行ける範囲で選ぶことが、結局いちばん実用的な基準になります。詳しい選び方の基準は名古屋で日帰り手術を受けるにはの記事で5つに整理しています。
よくある質問
紹介状は必要ですか
クリニックや専門外来であれば、紹介状なしで受診できるところがほとんどです。大学病院などの大きな総合病院は紹介状がないと選定療養費がかかるため、最初からクリニックの外科を受診するか、かかりつけ医で紹介状をもらってから行くのが無駄のない順路です。
健康診断で指摘されたが症状はない。それでも受診すべきですか
症状がなくても、一度は外科で診断を受けておくことをお勧めします。鼠径ヘルニアは時間とともに大きくなる病気で、大きく育ってからの手術は体への負担が増え、選べる術式も狭まります。小さいうちに状態を把握し、手術の時期を計画的に決められることが早期受診の利点です。
恥ずかしくて受診をためらっています
デリケートな場所だけに受診をためらう方は多いのですが、外科にとって鼠径ヘルニアは毎日のように診ている病気です。診察は数分で済み、医師も看護師も慣れています。ためらって嵌頓に至るほうがはるかに大きな負担になります。女性の場合、女性医師が在籍する医療機関を選ぶという方法もあります。
救急外来は何科でなくても診てもらえますか
救急外来は科を問わず受け入れて、必要な科へつなぐ窓口です。嵌頓が疑われる強い痛みのときは、何科かを考えるより先に救急外来へ向かってください。
健診の結果票に「鼠径ヘルニア疑い」とだけ書かれています
精密検査の受診先は外科・消化器外科です。結果票を持参すれば話が早く、超音波検査で確定診断を受けられます。
オンライン診療で相談できますか
初期の相談や受診先の案内はオンラインでも可能な場合がありますが、確定診断には触診と超音波検査が必要なため、最終的には対面受診が必要です。
まとめ
鼠径ヘルニアを疑ったら、受診先は外科または消化器外科です。子どもは小児外科、判断がつかなければかかりつけ医からの紹介でも構いません。ふくらみが戻らず強い痛みがあるときは嵌頓の可能性があるため、科を選んでいる場合ではなく、すぐに救急を含めた医療機関へ向かってください。
そして同じ外科でも、診断から手術まで一か所で完結するか、日帰りに対応しているか、術式を選べるかで、治療の負担は変わります。何科に行くかで迷っていた時間を、どこの外科に行くかの検討に使ってください。それが最短で治すための近道です。
この記事の監修者
明石 久美子医師(外科専門医/消化器外科専門医)
岐阜大学出身。これまで大垣市民病院、名古屋掖済会病院、名古屋大学などで消化器外科診療に従事し、現在は鼠径ヘルニアを専門に診療。これまでに約500件の鼠径ヘルニア手術に携わる。
保有資格:医学博士、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、消化器がん外科治療認定医、日本ヘルニア学会鼠径部ヘルニア修得医、がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会 修了、麻酔科標榜医

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