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鼠径ヘルニア手術後の膨らみ・しこり・チクチクはいつまで続く?|再発との見分け方と受診の目安

手術を終えて数週間たつのに、傷のあたりがまだふくらんでいる。触ると硬いしこりがある。動いたときにチクチクする。「治ったはずなのに、再発したのではないか」と不安になるのは、ごく自然なことです。

この記事では、鼠径ヘルニアの術後にふくらみやしこりが出る理由、一般にどれくらいの期間で落ち着くのか、再発とどう見分けるのか、そしてどんなときに急いで連絡すべきかを整理します。経過の期間はあくまで目安で、術式や体質、医療機関によって異なります。

結論を先に言うと、術後早期のふくらみやしこりは、再発ではなく手術に伴う体の反応であることが多く、数週間から数か月かけて小さくなっていくのが一般的です。ただし、急な強い痛み、発熱、赤み、吐き気を伴うときは、待たずに手術を受けた医療機関へ連絡してください。

診察室で医師が体の図を指しながら、中高年の男性に術後の経過を説明している様子

目次

術後のふくらみは、再発より「手術後の反応」のことが多い

手術では、飛び出していた腸や脂肪を戻し、弱くなった部分をメッシュで塞ぎます。その過程で、周囲の組織には切ったり剥がしたりした跡が残ります。そこに液体や血がたまったり、組織が腫れたりして、皮膚の上からふくらみとして触れることがあります。主な原因は4つです。

漿液腫(しょうえきしゅ)。体液がたまったもの

術後のふくらみとして、いちばん多いのがこのタイプです。手術をした場所に、透明から薄い黄色の体液がたまった状態です。ヘルニアの袋があった場所や、メッシュを置いた空間にできやすく、触ると柔らかく、押すとぷよぷよした感触があります。痛みは軽いか、ほとんどありません。

一般に、数週間から数か月かけて体に吸収され、小さくなっていきます。男性では陰嚢が腫れたように見えることもあり、驚く方が多いのですが、経過を見るだけで済むことが少なくありません。

血腫と内出血。血がたまったもの

手術では細い血管も切れるため、少量の出血はどうしても起こります。血管からにじんだ血が、組織のすき間にたまった状態です。最初は青紫色のあざとして皮膚に出て、日がたつと緑や黄色に変わりながら薄くなります。重力で下へ移動するため、足の付け根のあざが陰嚢や太ももへ広がって見えることもあります。

あざや軽い血腫は、一般に1〜3週間ほどで目立たなくなります。しこりが残る場合も、数週間から数か月で小さくなることが多いです。ただし、短時間で急に大きくなって張り、痛みが強まるときは出血が続いている可能性があるため、後述のサインに沿って連絡してください。

傷の周りの腫れ

手術した部位は、炎症反応で全体がむくみます。傷の周りが盛り上がり、硬く、押すと軽く痛みます。多くは術後数日から2週間ほどがピークで、その後ゆっくり引いていきます。

メッシュ周囲の硬さ

メッシュは、時間をかけて周りの組織となじんでいきます。この過程で、傷が治るときにできる硬い組織(瘢痕)が、境目のはっきりしない硬さとして指先に触れることがあります。傷に沿った細長い線のように触れることも多く、数か月かけて落ち着いていくのが一般的です。メッシュの扱いや、長引く痛みについては手術方法の記事でまとめています。

女性の場合は、同じ反応が足の付け根から大陰唇のあたりのふくらみとして出ることがあります。場所が違っても、考え方は男性と変わりません。

再発との見分け方。横になる、力む、時期の3つで考える

再発かどうかを最終的に決めるのは、診察と、必要に応じた超音波検査やCTです。自分で確定することはできませんが、受診のときの手がかりになる見方が3つあります。

横になると小さくなるか

再発したヘルニアは、手術前と同じように、立つとふくらみ、横になると引っ込むことが多いとされています。一方、漿液腫や血腫、瘢痕は、横になっても大きさがあまり変わりません。

ただし例外もあります。「変わらないから大丈夫」「引っ込むから再発」と自分で決めつけず、どう変わるかを観察して、診察で伝えてください。

咳や力みで膨らむか

咳をする、お腹に力を入れる、トイレで踏ん張る。そのときに、ふくらみがぐっと張り出して、指を当てると内側から押し返されるように感じる場合は、再発を疑う手がかりになります。漿液腫や瘢痕では、咳をしても大きさや張りが大きくは変わらないのが一般的です。

いつ気づいたか

術後すぐ、つまり最初の数日から数週間に出てくるふくらみは、手術に伴う反応であることがほとんどです。一方、いったん平らになったあとで、数か月から数年たって、以前と同じ場所にふくらみが戻ってきた場合は、再発の可能性を考えて受診してください。メッシュを使う手術の再発率は低いものの、ゼロではありません。

見るところ 手術後の反応(漿液腫・血腫など) 再発の可能性
気づく時期 術後すぐから数週間 いったん平らになったあと、数か月から数年後
横になったとき 大きさがあまり変わらない 小さくなる、または引っ込む
咳や力み 大きさや張りが大きくは変わらない 張り出して押し返される
触った感じ ぷよぷよ、または境目のない硬さ 手術前と同じ場所が柔らかく盛り上がる
経過 数週間から数か月で小さくなる 小さくならず、大きくなっていく

この表はあくまで目安で、当てはまらない場合もあります。見分けに迷う状態が続くときは、診察で確かめるのがいちばん確実です。

経過の目安。いつまで様子を見てよいか

ふくらみやしこりが落ち着くまでの期間には個人差があります。一般的な流れは、次のようになります。

  • 術後〜2週間ごろ。腫れ、あざ、傷の痛みが中心で、多くはこの間にピークを越えます
  • 2週間〜数か月。漿液腫や硬さ、チクチクした感じが少しずつ小さくなっていきます
  • 3か月前後。多くの方は、ふくらみやしこりがほとんど気にならなくなります
  • 半年以降。変わらずに残っている、あるいは大きくなっているときは、受診して確かめる時期です

相談の目安として、術後1〜2か月たっても大きくなり続けている、3か月たっても変化が見られない、という場合は、次の再診日を待たずに連絡して構いません。医療機関によって術後の診察の間隔は異なるため、手術時に説明された再診予定も確認しておいてください。

診察では、触診に加えて、立った状態と横になった状態の両方で見てもらうと判断しやすくなります。さらに、超音波検査でふくらみの中身が液体なのか、腸や脂肪が出ているのかを確かめることができます。漿液腫と分かった場合は、経過を見るか、状態によっては針で液体を抜くかを、医師が判断します。

チクチク・突っ張り・違和感の正体

術後の違和感は、多くの方が経験します。感覚の種類ごとに、一般的な経過を説明します。

傷の周りのチクチク、ピリピリ、しびれ

皮膚のすぐ下には、細い感覚の神経が走っています。手術のときにこの神経が引き伸ばされたり、傷の中に巻き込まれたりすると、治る過程でチクチク、ピリピリ、電気が走るような感覚が出ます。傷の周りだけでなく、太ももの付け根や、男性では陰嚢の付け根の感覚が鈍くなったり、ちくちくしたりすることもあります。

神経が回復する間の反応であることが多く、一般に数か月かけて薄れていきます。半年ほどかかる方もいます。

突っ張り感、引っ張られる感じ

メッシュの周りの組織が硬くなじむまでは、体を反らす、足を大きく開く、立ち上がるといった動作で突っ張るように感じることがあります。数週間から数か月で和らぐのが一般的です。急に無理に伸ばさず、日常の動作の範囲で慣らしていってください。

天気や疲れで強まる日がある

雨の前や、疲れがたまった日に、傷のあたりの違和感が強まることがあります。これは傷が治っていく途中でよく見られる揺らぎで、波があっても全体として軽くなっていれば心配は要りません。

3か月を超えて続くとき

術後3か月を超えて痛みや違和感が続く場合は、慢性疼痛と呼ばれます。生活に支障が出る強さのものは多くないとされていますが、内服薬など対処法があるため、我慢せずに手術を受けた医療機関へ相談してください。詳しくは手術方法の記事でも触れています。

医師が問診票を見ながら患者の話を聞いている様子

すぐ受診すべきサイン

次のような症状があるときは、次の予約日や週明けを待たず、手術を受けた医療機関へその日のうちに連絡してください。

  • 急に強い痛みが出て、痛み止めを飲んでもおさまらない
  • ふくらみが短時間で急に大きくなる、張って硬くなる
  • ふくらみが硬く、押しても戻らず、痛みがある
  • 吐き気や嘔吐、お腹の張りがあり、便やガスが出ない
  • 38度以上の発熱が続く、寒気がする
  • 傷が赤く腫れて熱を持つ、膿のような液や嫌なにおいがある
  • 痛みが日ごとに強くなっていく
  • 尿が出ない

とくに、硬くて戻らないふくらみに、強い痛みや吐き気が重なるときは、腸が締め付けられる嵌頓という状態が疑われます。緊急の対応が必要になることがあるため、放置するとどうなるか、嵌頓のリスクもあわせて読んでおいてください。

出血が止まらない、意識がもうろうとする、呼吸が苦しいといった場合は、ためらわずに119番で救急車を呼んでください。

受診先と、連絡のしかた

まず手術を受けた医療機関に

相談先の第一候補は、手術を受けた医療機関です。術式やメッシュを置いた位置、手術中の様子の記録が残っているため、ふくらみが想定の範囲かどうかを判断しやすいからです。再診の予約日でなくても、電話で相談を受け付けている医療機関が多いので、まず電話で状況を伝えてください。

手術した医療機関が遠方にある、すでに通えないという場合は、外科や消化器外科で診てもらえます。そのときは、手術日、術式、医療機関名が分かるものを持参すると診察が進みます。名古屋で医療機関を探すときの全体像はこちらの記事にまとめています。

夜間・休日の場合

手術のときに渡される説明書には、夜間や休日の連絡先が書かれていることが多いので、退院、あるいは帰宅した日のうちに、場所を確認しておくと安心です。時間外の窓口がない場合や、つながらない場合は、救急外来のある病院を受診します。

受診すべきか迷うときは、地域によって救急安心センター(#7119)で相談できます。電話で状況を伝えると、救急車を呼ぶべきか、病院を受診すべきかの助言が受けられます。ただし、強い痛みと吐き気が重なるような場合は、迷わず救急の受診を優先してください。

診察で伝えるとよいこと

短い時間の診察で状況が伝わるように、次のことをメモしておくとスムーズです。

いつからふくらんでいるか、大きさがどう変わってきたか、立った状態と横になった状態でどう違うか、咳や力みで変わるか、痛みや熱の有無、飲んでいる薬です。血をさらさらにする薬を飲んでいる方は、出血しやすいため、薬の名前を忘れずに伝えてください。

ふくらみが出ている時間帯に、立った姿勢と横になった姿勢で写真を撮っておくと、診察のときに見せられます。診察室ではふくらみが引っ込んでいることもあるためです。

自宅のリビングで、手術を終えた中高年の男性がソファに座って休んでいる様子

自分でできること、避けたいこと

してよいこと

痛みの範囲で、普通に歩いて過ごすのは回復に役立ちます。傷は清潔に保ち、シャワーの許可が出ていれば、泡でやさしく洗って流してください。ふくらみの大きさは、日付をつけて記録しておくと、変化が分かりやすくなります。

腹圧を避けることも大切です。便秘でいきむ、咳が続く、といった状態は、傷にも再発予防にもよくありません。便通を整えること、咳が続くなら治療を受けることを心がけてください。

避けたいこと

一般に、次の行動は控えたほうがよいとされています。

  • ふくらみやしこりを強く押す、もむ、マッサージする。組織を傷め、出血や炎症を招くことがあります
  • 針などで刺して液体を抜く。感染のおそれがあります
  • 腫れや内出血が強い時期に、患部を温める。腫れが増すことがあるため、湯船や温湿布の可否は医師に確認してください
  • 処方された薬を自己判断で増減する、やめる。とくに血をさらさらにする薬は、医師の指示に従ってください

仕事や運動をいつから再開してよいかは、術後の過ごし方と仕事復帰の記事に目安をまとめています。ふくらみやしこりが気になる間は、重い物を持つ動作を急いで再開せず、診察で相談してから進めるのが無難です。

よくある質問

術後1か月たちますが、ふくらみが残っています。再発でしょうか

1か月ほどでは、漿液腫や瘢痕が残っていることが多く、再発とは限りません。ただし、大きくなっている、咳で張り出すといった変化があれば、早めに手術した医療機関で診てもらってください。

傷の下に硬いしこりがあります。メッシュがずれたのでしょうか

硬いしこりの多くは、傷が治る過程でできる瘢痕です。メッシュがずれたとは限りませんが、見た目や触感だけでは区別できないため、気になる場合は診察で確かめるのが確実です。

漿液腫は、針で抜いたほうが早く治りますか

多くは自然に吸収されるため、経過を見ることが一般的です。医療機関によっては、大きくて張る場合に診察室で抜くことがありますが、自分で刺すのは感染のおそれがあるので避けてください。

陰嚢が腫れて大きくなりました。大丈夫でしょうか

術後の陰嚢の腫れやあざは、体液や血が下へ移動して起こり、数週間で引くことが多いです。ただし、急に大きくなる、強く痛む、赤くなる、発熱を伴う場合は、早めに連絡してください。

術後半年たってもチクチクします。どうすればよいですか

神経の回復には時間がかかり、半年ほど続く方もいます。生活に支障があるほど強い、あるいは悪化している場合は、内服薬などの対処法があるため、手術した医療機関に相談してください。

再発だった場合、また手術になりますか

再発と診断された場合は、状態に応じて再手術を検討します。前回と別の経路から治療するのが原則で、詳しくは手術方法の記事で説明しています。

相談は、手術を受けた病院でないといけませんか

手術記録がある医療機関が判断しやすいため、まずはそこに連絡するのが基本です。通えない事情がある場合は、手術日と術式が分かるものを持って、外科で診てもらえます。

まとめ

鼠径ヘルニアの術後に出るふくらみやしこり、チクチクした感じは、漿液腫、血腫、腫れ、メッシュ周囲の硬さといった手術後の反応であることが多く、一般に数週間から数か月かけて落ち着いていきます。横になっても変わらず、咳でも張り出さず、術後すぐに気づいたものは、再発より反応の可能性が高いといえます。

一方で、急な強い痛み、発熱、赤み、吐き気、急に大きくなるふくらみは、待たずに手術を受けた医療機関へ連絡してください。数か月たっても変わらない、または大きくなっていく場合も相談の目安です。不安を抱えたまま過ごすより、一度診察で確かめたほうが、気持ちの面でも楽になります。

この記事の監修者

明石 久美子医師(外科専門医/消化器外科専門医)

岐阜大学出身。これまで大垣市民病院、名古屋掖済会病院、名古屋大学などで消化器外科診療に従事し、現在は鼠径ヘルニアを専門に診療。これまでに約500件の鼠径ヘルニア手術に携わる。

保有資格:医学博士、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、消化器がん外科治療認定医、日本ヘルニア学会鼠径部ヘルニア修得医、がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会 修了、麻酔科標榜医

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