手術を受けると決めたとき、まず気になるのが「何日入院するのか」ではないでしょうか。会社への連絡、家族の予定、入院費用の準備。どれも日数が分からないと動けません。「鼠径ヘルニア 入院期間」と調べても、病院ごとに書き方が違い、結局どれだけ休めばよいのか分かりにくいものです。
この記事では、入院日数の目安と日程の流れ、入院費用、仕事を休む日数、日帰り手術との違いを順に説明します。日帰り手術の詳しい中身は別の記事に任せて、ここでは「入院するなら何を決めておくか」に絞ります。
入院日数は、一般に1〜3泊程度が多いとされます。ただし、術式、片側か両側か、年齢や持病、病院の運用で変わるため、診察で確認するのが確実です。

鼠径ヘルニアの入院日数は、一般に1〜3泊程度
鼠径ヘルニアの手術は、入院の期間が短い手術のひとつです。一般に、手術の前日または当日に入院し、手術の翌日から数日以内に退院する形が多く見られます。「3泊4日」「2泊3日」のように、病院があらかじめ日数を決めた標準の日程表(クリニカルパス)を使っている場合も少なくありません。
日数は医療機関によって異なります。ここで書く数字は、あくまで全体像をつかむための幅のある目安です。
片側か両側かで変わる
ふくらみが片側だけなら、1〜2泊程度で退院する例が多いとされます。左右の両側に出ている場合は、手術時間が延びて体への負担もやや大きくなるため、2〜3泊程度と、片側より長めに設定する病院があります。両側を一度に手術するか、時期を分けるかも、病院と状態によって方針が分かれます。
術式と麻酔で変わる
腹腔鏡下手術と鼠径部切開法のどちらでも、入院日数の幅そのものに大きな差はないと考えられています。違いが出るのは、麻酔の種類や、術後の経過をどこまで院内で見守るかという病院の方針のほうです。全身麻酔の場合は、麻酔が抜けて歩行や排尿ができるまで病棟で見守る時間が必要です。術式の違いは手術方法(腹腔鏡と切開法)で、麻酔については麻酔と痛みで説明しています。
年齢や持病で変わる
高齢の方、心臓や肺の持病がある方、糖尿病のある方、血をさらさらにする薬を飲んでいる方は、術前の検査や術後の見守りを慎重に行うため、日数が延びることがあります。逆に、持病が落ち着いていれば標準の日程で退院できる方も多くいます。年齢だけで日数が決まるわけではありません。術前の診察と検査の結果をもとに、麻酔科医と執刀医が必要な日数を見積もります。入院の予約をするときに、想定の日数を聞いておくと、その後の段取りが立てやすくなります。
予定より延びることもある
術後に熱が出た、傷のまわりが腫れた、排尿がうまくできない、吐き気が続くといった場合は、退院を1日から数日延ばして様子を見ます。珍しいことではないので、仕事や家庭の予定には1日ほど余裕を持たせておくと慌てずに済みます。

入院から退院までの流れ。日程の例
病院によって細部は違いますが、入院手術の流れはほぼ共通です。2泊3日の例で説明します。
入院日。手術前日、または当日の朝
前日入院の病院では、昼から夕方にかけて病棟に入ります。看護師による体調の確認、麻酔科医や執刀医からの説明、同意書の確認があり、夕食のあとは絶食の指示が出ます。夜は病室で過ごします。
当日入院の病院では、朝に受付を済ませて病棟に入り、そのまま着替えて手術室へ向かいます。前日の準備は外来で済ませておきます。
手術当日
手術は数十分から1時間半程度で終わる例が多く、片側か両側か、術式で幅があります。終わったあとは病室に戻り、麻酔が覚めるまで横になって休みます。飲水と歩行、排尿ができることを確認したら、夕方以降に食事が出ます。夜間は看護師が定期的に様子を見に来ます。
術後1日目から退院まで
翌朝に医師が傷と体調を診察し、問題がなければ退院の許可が出ます。2泊3日の例では、この日は病棟で過ごして、翌日に退院する形です。退院の日には、痛み止めの飲み方、傷の洗い方、控える動作、受診が必要な症状の目安について説明があります。次回の外来の予約もこのときに取るのが一般的です。
退院後の過ごし方は術後の過ごし方・仕事復帰にまとめています。入院中に聞いておきたいことは、退院後に困ったときの連絡先と、重い物を持てるようになる時期の目安の2つです。
入院費用の考え方。手術料は同じ、入院の分が加わる
鼠径ヘルニアの手術は健康保険の対象で、手術そのものの料金(診療報酬の点数)は全国共通です。どの病院でも、同じ術式なら手術の点数は同じです。入院すると、そこに次のような費用が加わります。
手術の費用に上乗せされるもの
- 入院基本料。入院した日数分がかかります。病院の種類や看護体制によって単価が違います
- 食事代。保険診療でも一部は自己負担(標準負担額)で、1食あたり数百円です。泊数が増えれば、その分積み上がります
- 差額ベッド代。個室や少人数の部屋を希望した場合にかかり、保険の対象外です。1日あたりの金額は病院と部屋で大きく幅があります
- そのほか、病衣やタオルのレンタル、診断書の文書料など
差額ベッド代は、病院から希望を確認したうえで同意書をとるのが決まりです。大部屋で足りる場合は、請求されません。個室を選ぶかどうかで入院費用の総額は大きく変わるため、入院前に確認しておくと安心です。
自己負担には上限がある
同じ月の医療費の自己負担が一定の額を超えた場合、超えた分が戻る高額療養費制度が使えます。事前に限度額適用認定証を用意しておけば、窓口で支払う額をはじめから上限までに抑えられます。ただし、差額ベッド代や食事代は高額療養費の対象外です。
術式別の手術費用の目安、制度の使い方、医療費控除まで含めた総額の考え方は、手術費用・保険・高額療養費に詳しく書いています。この記事では入院によって何が増えるのかだけ押さえておけば十分です。

入院と日帰りの違い。手術の中身は同じ
入院と日帰りで、手術の目的も基本的な内容も変わりません。メッシュで弱くなった部分を補強する手術で、違うのは、麻酔が覚めたあとの回復を病院で過ごすか、自宅で過ごすかです。
| 項目 | 入院手術 | 日帰り手術 |
|---|---|---|
| 手術の内容 | メッシュによる補強。術式は診察で決める | 入院と同じ |
| 術後の夜 | 病室で過ごす。看護師が定期的に様子を見る | 自宅で過ごす。変化に気づくのは本人と家族 |
| 病院にいる期間 | 一般に1〜3泊程度 | 手術当日の朝から夕方まで |
| 費用に加わるもの | 入院基本料、食事代、必要に応じて差額ベッド代 | 入院にかかる費用はほぼない |
| 仕事を休む日数 | 入院中の休みに、退院後の自宅療養が加わる | 手術当日と翌日以降の自宅療養 |
| 付き添い | 説明や同意のときに家族の同席を求められることがある | 送迎や帰宅後の連絡が取れる人を求められることがある |
傷が治る速さは、入院でも日帰りでも変わりません。入院すると回復が早くなる、ということはなく、入院は「最初の夜を医療者の近くで過ごせる」ことに価値がある選択です。日帰りの手術の具体的な流れは、名古屋で鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術を受けるにはに書いています。
入院と日帰り、どちらが向くか
決め手は、年齢よりも全身の状態と生活の条件です。心臓や肺の持病がある、抗血栓薬を中止できない、両側や再発で手術が大きくなる、術後の夜に連絡が取れる人がいない、という場合は、入院を勧められることがあります。持病が安定していて、帰宅後に見守ってくれる家族がいるなら、日帰りが選べることもあります。
夜に一人で過ごす心細さや、手術への不安の強さも、入院を選ぶ十分な理由です。日帰りの利点と注意点は、ここでは触れる程度にします。診察の場で、条件と希望を伝えて決めるのがいちばん確実です。
日帰りという選択肢があることも知っておいてください。病院で過ごす時間が短く、生活の中断が少ないのが日帰りの利点です。その代わり、術後の夜を自宅で迎える準備が要ります。どちらが優れているという話ではありません。
仕事を休む日数は、入院日数に自宅療養を足して考える
入院手術で休む日数は、入院している日数と、退院後に自宅で過ごす日数の合計です。たとえば2泊3日の入院なら、入院期間の3日に、退院後の療養が加わります。デスクワークなら、退院後数日から1週間ほどで復帰する例が多く、立ち仕事や力仕事は、さらに1〜2週間ほど重い作業を控えるのが一般的な目安です。
職種別の復帰プランは術後の過ごし方・仕事復帰に書いています。日程を決めるときは、週末や連休をはさんで組むと、休みの日数を抑えられます。
勤め先によっては、入院の場合に入院証明書や診断書を求められます。有給休暇や傷病手当金の扱いは、勤務先と加入している健康保険で違うので、手術の日程が決まる前に確認しておくと安心です。
入院の準備と、体験談ブログの読み方
入院が決まると、持ち物や前日の過ごし方が気になります。一般に必要になるのは、保険証と医療費の関係書類、普段飲んでいる薬とお薬手帳、洗面用具、着替え、そして病院から指示された書類です。病衣やタオルは病院で用意されている場合も、有料で借りる場合もあるので、案内を見て揃えてください。
手術前日の夜から絶食になるよう指示されます。水分をいつまで取ってよいか、いつもの薬を飲んでよいかは、人によって指示が違います。血をさらさらにする薬や糖尿病の薬は、続けるか止めるかを自分で決めず、病院の指示に従ってください。喫煙している方は、術後の肺の合併症を減らすために、手術の前から禁煙を勧められるのが一般的です。
入院について検索すると、個人の体験ブログが数多く見つかります。入院の雰囲気や、病室で何をして過ごしたかをつかむには参考になります。ただし、日数、術式、麻酔、病院の運用は人によって違い、書いてある日数が自分に当てはまるとは限りません。体験談は様子をつかむ材料にとどめ、日数と費用は自分の診察で確認するのが確実です。
付き添いについても書いておきます。病室での泊まり込みを求められることは一般に少なく、手術の説明や同意書の場面で家族の同席を求められる程度です。面会は、時間や人数に制限を設けている病院が多いので、家族には入院前に伝えておくと行き違いがありません。荷物の受け渡しや退院当日の迎えを頼める人がいると、退院の日がスムーズに進みます。
入院前に決めておくこと。診察で聞くこと
入院の準備で慌てないために、診察では次の点を聞いておくと、日程と費用の見通しが立ちます。
- 私の場合は何泊が目安で、前日入院か当日入院か
- 片側か両側か、予定より延びる可能性はあるか
- 大部屋と個室の違いと、差額ベッド代の金額
- 入院費用の見積もり。食事代や文書料を含めた総額の目安
- 退院後に困ったときの連絡先と、夜間の対応
- 仕事に戻れる時期の目安と、診断書が必要なときの手続き
名古屋・愛知で受診先を選ぶ段階の人は、名古屋での全体像はこちらで、病院の種類ごとの役割と診療科の選び方を確認できます。まず診察を受けて、状態を確かめてから入院か日帰りかを相談する流れが現実的です。
よくある質問
鼠径ヘルニアの入院は何日くらいですか
一般に1〜3泊程度の例が多いとされます。前日または当日に入院し、手術の翌日から数日以内に退院する形です。片側か両側か、年齢、持病、病院の方針で変わるため、医療機関によって異なります。
両側のヘルニアだと入院は長くなりますか
手術時間が延び、体への負担もやや大きくなるため、片側より1泊ほど長く設定する病院があります。両側を同時に手術するか、時期を分けるかも病院と状態で異なります。
入院費用は日帰りよりどのくらい高くなりますか
手術の点数は同じですが、入院基本料と食事代が日数分加わり、個室を選ぶと差額ベッド代が別にかかります。金額は医療機関によって異なるので、見積もりを確認してください。制度の説明は手術費用の記事にあります。
高額療養費は入院費用の全額に使えますか
手術や入院の保険診療分の自己負担が対象です。差額ベッド代や食事代、診断書の文書料などは対象外です。事前に限度額適用認定証を用意しておくと、窓口の支払いを抑えられます。
入院期間は仕事を休む日数と同じですか
同じではありません。入院している日数に、退院後の自宅療養の日数が加わります。復帰の目安は仕事の内容で変わるため、術後の過ごし方の記事を参考に、診察で確認してください。
入院が予定より延びることはありますか
あります。術後の発熱、傷の腫れ、排尿がうまくできない、吐き気が続くといった場合は、退院を延ばして経過を見ます。予定には1日ほどの余裕を持たせておくと安心です。
入院と日帰りでは、手術の内容は違いますか
手術でやることは同じです。違うのは、麻酔が覚めたあとの回復を病院で過ごすか自宅で過ごすかです。どちらが向くかは、診察で全身の状態と生活の条件を見て決めます。
まとめ
鼠径ヘルニアの入院日数は、一般に1〜3泊程度が多く、片側か両側か、年齢や持病、病院の方針で変わります。入院すると、手術の費用に入院基本料と食事代が日数分加わり、個室を選べば差額ベッド代も別にかかります。仕事を休む日数は、入院日数に退院後の自宅療養を足して考えます。
入院でも日帰りでも、手術の中身は同じです。違いは回復を病院で過ごすか、自宅で過ごすかだけです。日数や費用は医療機関によって異なるので、診察の場で見通しを聞いて、日程を組んでください。
この記事の監修者
明石 久美子医師(外科専門医/消化器外科専門医)
岐阜大学出身。これまで大垣市民病院、名古屋掖済会病院、名古屋大学などで消化器外科診療に従事し、現在は鼠径ヘルニアを専門に診療。これまでに約500件の鼠径ヘルニア手術に携わる。
保有資格:医学博士、日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、消化器がん外科治療認定医、日本ヘルニア学会鼠径部ヘルニア修得医、がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会 修了、麻酔科標榜医

コメント